現PdM元藝大生がブルーピリオドから読み解く、ものづくりとプロダクト開発の類似性

初めまして、HRBrainでPdMをしている近藤です。
弊社プロダクトの人事評価、EX(Employee Experience)、公開APIを担当しております。

HRBrain Advent Calendar 22日目の記事です。

始めにお伝えしますが、この記事を読み終わった後に得られるものはあるようで何もないので仕事の箸休め程度に読んでいただけたら幸いです。
qiita.com

ブルーピリオドという漫画

皆さんブルーピリオドという漫画をご存知でしょうか?
恥ずかしながら私が知ったのはごく最近で、11月に入社した待望のPdM(弊社4人目)けんしろうくんに教えて貰ったのが始めでした。
そこからよく耳にするようになり、気になってkindleで試し読み出来てしまったのが運の尽き、全巻大人買いしました。
大人になったなと感じる瞬間ですね。

読んだことがない方に簡単に概要お伝えすると、(ちょっとだけネタバレです)
何にも夢中になれない一見リア充高校生男子があることをきっかけに絵を書くことに目覚め、誰よりも努力して受験に挑むよ、そしてその後も色々あるよ、って感じのお話です。
読んだことない方は是非読んでみてください。普通に面白いです。

さて、かく言う私も芸大に行っておりました。
私は一浪してデザイン科に入った訳ですが、まずこの漫画を一言で総評すると、
「リアルすぎて反吐がでる」
でした。笑
これは決してこの漫画を貶している訳ではなく、当時の辛さ、葛藤、プレッシャー、緊張感、負の感情、喜びの感情、様々なものが「そのもの」過ぎて、当時の記憶が呼び覚まされた、という逆に賛美の言葉です。

そうです、芸大受験、芸大生、嘘偽りなくまさにあの漫画の通りです。※個人的感想です
私自身田舎のギャル(死語)で美術の予備校にちゃんと通い始めたのも周りよりかなり遅めの高校三年生の5月からでした。
最初から芸大一本で決めていましたが、初めましての面談の際にその時現役芸大生だった大阪人講師から「今からじゃひゃくぱー受かんないよw」と言われ、「クッ○が絶対受かってやるよ(心の声)」と心を燃やしたことが思い出されます。口が悪い。若いですね。
※ちなみにその大阪人講師、めちゃクセ強めの方でしたが私にとっては恩師です。

そしてうすうす思い始めてきている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「いつになったらタイトルの話出てくるんだ?」
仰る通り、そろそろ本題に移っていきましょう。
ちなみにこれからのお話はこの本を読んだことがある方であればより分かりやすい内容かもしれません。

www.amazon.co.jp


ものづくりとプロダクト開発

結論から言います。
ものづくりとプロダクト開発での1番の共通点は
「なぜこれをつくるのか」
というWhyの部分に、とにかくこだわりと深い思考、考察を持って挑むこと。です。

その上で
「何を」「どのように」
作るのか、のWhatとHowにもこだわりを持ちます。
主人公もずっとこれで苦しんでますよね。
私もずっと苦しんでたし、今も苦しんでます。笑

もちろんものづくり、プロダクト開発、その間には大きな隔たりがあるのも事実です。
それが何かと言うと、一つは
「ビジネスが先行しているか」、「後からビジネスがついてくるか」の違いです。

昨今ではビジネスを目的としたアートというのも存在してはいますが、元来アーティストというのは自己表現、自己探究の上での何がしかの作品を作る、ということが先行しており、それに共感を得た時、初めてビジネスとして成り立っていく。
そう言うものだと私は理解しています。

逆にプロダクト開発はある一定の既に存在するマーケット、存在し得るであろうマーケット、様々な課題要素から打ち出す先を見つけ、刺しにいく。
その上で何故やるのか、どうやるのか、を具体化していくものですね。

入りは違えど「なぜ」作るのか、「なに」を「どうやって」作るのか、ここの思想はまるで一緒であると思っています。

もう一つは
「一人でやるか」
「チームでやるか」
は大きな違いですね。
チームでものづくりしてる人もいますので一概には言えませんが。

基本的な大きな共通点と、その中の違いをご説明したので、この辺を前提としてご認識いただきつつ、
次はもう少し具体的なお話に入っていきましょう。


デッサンについて 〜準備編〜

本の中でも結構説明されていましたが、ここではより具体のデッサンというものを少し説明させてください。

日本で言うデッサンというのは主に鉛筆を使って、見たものそのまま写実的に描く手法のことを指すことが多いです。
また、ここでお話しするデッサンというものは、主に芸大受験の為に行っていたデッサンのことを指しています。

デッサンをする時、まずは描く紙をB3のパネルに貼るところから入ります。
水張りと言ってハケで紙を濡らし、濡らした面をパネルに貼って引っ張りながら枠を水張りテープで止めます。
ここで失敗すると画面の四隅に空気が入ってしまい、そこだけベコベコになるし超ダサいとされます。
こんな感じ↓

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失敗した水張り(参照先:https://www.sweetfish-art.com/blog20180404/

それから鉛筆をカッターで削ります。
鉛筆には硬さがあり、ものによっては最大で12B〜10Hまでの24種類あります。固さの違いによる色の濃さと質感が違います。
それらを適所に使い分けて描きます。
私の場合は6B〜6Hくらいの13本、且つよく使う硬さのものは2〜3本用意するので15本くらい削ります。

余談ですが鉛筆はメーカーによって色が違うのをご存知ですか?
私はステッドラーという、少し青っぽい色の鉛筆を好んで使っていました。その中でもFの色が一番綺麗で大好きでした。

www.staedtler.jp

デッサンするときの鉛筆はとにかく芯を長く出し、木の面と芯を綺麗に一直線にします。
主人公もびっくりしてましたね。ほんとにギャグみたいに長いので初見の方はびっくり案件です。
芯を長く出し一直線にすることで、描く時に面で色を乗せられ、且つ木の部分が紙に当たることなく気持ちよく鉛筆を動かせます。

あと用意するものとしては、ねり消し(食パン)、様々なぼかし道具(ティッシュ、羽根、さっぴつ、等)金属の長めな棒(水平垂直のラインを見ます)、
そして最後に「やったるぞ」という気持ちと丈夫なおしりです。※7時間ほぼ座りっぱなしなのでおしりほんとに痛いんです。。
ここまでがデッサンをする上での準備になります。

ここまでの話で何が言いたいかと言うと、良い絵を描くには道具が重要!ということです。
どんなにかっこいい絵が描けても、1番最初の水張りで失敗してて四隅がボコッとしているだけで魅力は半減します。
または鉛筆が削れてなくて欲しい色がすぐ乗せられない!となると、決められた時間の中でその分の作業が必要になり、充分な描く時間を確保出来ず、手が足りない(描く密度が足りない)と言ったことも起こります。

これはプロダクト開発で言うチーム作りと似ていると思っていて、
必要なアクションを取るための必要な人材がいないことで最大限のパフォーマンスを出せない、と言うことも起こり得ますね。
開始までに綺麗に鉛筆を削る必要があるように、人に対しても丁寧に磨きをかける、育成させる、ということも時には必要になります。

アーティストにとって道具は命 だし、
ビジネスにおいても必要な人材は生命線 である。

身の回りの環境は丁寧に整え、大事にしましょう。
はい、教訓です。


デッサンについて 〜実践編〜

さてお待ちかね、描きます。
私が受けた芸大デザイン科の一次試験はデッサンです。
モチーフが何かは当日その場で分かるのですが、デッサンであるということは基本決まっているので、受験まで、本当に文字通り毎日、描きます。

試験は合計7時間で一枚書き上げる必要があるので、予備校でも浪人時代は毎日7時間描きます。
7時間が長いか短いかは、デッサンを一つの作品として捉えた場合は、私としては短すぎる、くらいの認識です。
作品というものに「終わり」というのは無くて、作者が「終わり」と言ったから終わりなだけですよね。
ここもプロダクトと似ている点ですね。

作品もプロダクトも育てるもの。
愛がなければ出来ないですね。
皆さんはプロダクトに愛を持ててますか?
はい、急な投げかけです。
私は、愛したいけど愛せないの・・・みたいな状況にいるのですが、ちゃんと愛は持ってます。

本題に戻りますが、デッサンを描くとき、実は様々なテクニックがあります。
テクニックは武器になりますが、使いすぎると嘘くさくなります。
なぜならそこに「自分の目というフィルターを通して見たもの」を描いていないからです。
テクニックに頼るのでなく、まず素直に、見えたものを受け取る作業が必要です。

そこから自分なりに解釈をして、どんなタッチで描けば再現出来るのか、
描いては消してを繰り返し、こねくり回して形にしていきます。
そうです、描ける時間は7時間しかないですが、2時間経って大きく形が違う!!!となったら全部消す事もあります。
ピボットです。
こちらの記事でピボットについて解説されてます。

note.com

やはりこのピボットは早ければ早いほど良くて、大きな軸が崩れているとどれだけ上を綺麗に描けたとしても
「全然似てないね、全然違うね、」で終わります。

ではこの崩れに気づくためにどうすれば良いでしょう?
本の中でもしばしば同じことを主人公がやってましたが、
「離れる」ことです。
集中して作業を行なっていると、人って周りが見えなくなりますよね。
特に数十センチの距離でずっと絵を眺めていると、全体がまるで見えてない状態なのです。
なので、意図的に、半ば強制的に、どんなに描きたい!と思っていても1時間に一回は必ず椅子から立って、部屋の一番端から客観的に絵を見ることをします。

全体的な方向性が合ってるか、進み具合はどうか、部分的な手の入れ方をしてないか、などなど。

全体を見て細部を見る。

この思考の切り替えが上手に出来る様になることは絵を描くことの上での上達の一歩ですが、
プロダクト開発だけとは言わず、ビジネスをする上でとても役立つスキルであると言って良いと思います。

一人一人がこれをしているチームがあれば、それは最強と言えるでしょう。

さて、実際に手を入れる際ですが、まず書き始めに「アタリ」をつけます。
画面の中でどんな構図でどのような大きさでそこに存在させるか、ざっくりと色を乗せていきます。
この「アタリ」の時点でドンピシャに狂いなく描けていれば、その絵はもうこっちのものです。

この時点である程度色を乗せたときに狂いがない場合、もはやここで完成と言っても良いくらいのものが出来てしまいます。
これはMVP(Minimum Viable Product)の考え方と近いですね。
最小の工数で全体が見える(使える)ものになるのです。

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ここで大切なことはポイントを押さえることで、「どこを押さえれば」「どう見えるか」が最初にしっかりイメージができれいれば、後がとっても楽になります。
なぜならあとは「ひたすら描きこむ」だけだからです。

プロダクト開発に置き換えると、「どのスコープで」「何を作るか」を最初に明確にしてあげることで
エンジニアの手は書くことに集中できますね。
プロダクトはいろんな人の「想い」で出来ているものだと思うので、その想いというのは生き物と同じく可変的な分、事前に決めきることは難儀なことではありますが。。

そして、ゴールに向かってひた走る(ひたすら書く)、ゴリゴリ期に入ります。
記事も終盤に差し掛かってきましたところで最後に一つ質問です。

同じものを見て書いてるのに同じ絵がないのって何故だと思いますか?

そんなの当たり前やろ、と思いますね。しかし何故でしょう?
受験生なんて特にですが、様々なテクニックを教えられ、上手い人の描き方を盗み、巨匠やアーティストの絵をひたすら観賞したりしてます。
それでも同じ絵がないのは、私は、「その人の持つによって違いが産まれる」と考えています。

絵を描く際の癖は、手の動かし方、鉛筆の持ち方、力の強さ、描く一本一本の線の長さや太さ、そして、思考の癖、この辺全てが関わっていると思っています。(体つきや体格、骨格なんかも本当は関わっていると思います)
そしてこの癖ですが、時には直さなければいけない厄介なものも含まれていたりしますが、先述しました通り違いに繋がります。
違いというのは個性であり、個性が出るから同じ絵がないんですね。

これって仕事をする上でもよく感じたりしないでしょうか?
「あ〜この人ってこういう考え方をするのか」とか、「同じ内容を話しているのにこの人からはいつも違う視点からの指摘があるな」とか。
デッサンは喋らないですが、自分がある程度描けるようになると、絵を見てこう言ったその人の「言いたいこと」「見えてるモノ」が分かるようになります。
人は大なり小なり癖を必ず持っていますが、その個性の違いって強みになりますよね。

そうです、最後に言いたかったことは、周りと一緒じゃなくても良いのだということ。
自分の強みを理解して、受け入れて、染まるところは染まりながらも染まらずに、そして周りも認めながら、進めば良いのではないでしょうか。
一気に宗教感が出てきました。

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そんなこんなで書いた絵がこれ。(現役時代作)

こんな葛藤や悟りなんかも、ブルーピリオドでは良い〜感じでまとめられていたりします。
きっと読みたくなったことでしょう。


まとめ

さあ、ここまで書きまして、改めて、言葉で言うのは易し!と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その通り!!!
ものづくりもプロダクト開発も大きくは社会という中で生きるのも、簡単ではございません。
やはりある程度の場数を踏まないと自分のモノにすることはできませんね。
私も絶賛精進中です。
経験できる場がある、ということがどれほど重要で恵まれていることか、改めて実感させていただきました。(ありがたや)

色々な類似点を書かせてもらいましたが、最後に一つ、
ものづくりとプロダクト開発、双方の重要な点として、
ものづくりの過程は作品との対話、
プロダクト開発の過程は人との対話、
ということです。

一人で作っていても、チームで作っていても、
独りよがりでは良いものは作れないですね。
様々な問いかけや投げかけに対して丁寧に拾って返してあげる必要があります。
本の中での主人公は、自身への問いかけに対して丁寧に自分で自分に返してあげている行為がとても印象的でした。

正解のない問題を解くのは時には何より困難ですが、時には何より楽しいものへと変わるものです。
私たちも、日々悩みながら、頭を抱えながら、発狂しそうになりながらも、
産み出したものが「良い!」と言ってもらえるように、チームで取り組んでいます。


最後に

HRBrainでは、プロダクトと会社の成長を一緒に牽引していくメンバーを募集しております。
PdMとしての業務で普段何をしているのか、この記事では1ミリもお伝え出来ませんでしたので、興味ある方は是非お話聞きにきてください。
まずはカジュアルなお話からでも大歓迎です。

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